大奥10巻

大奥 10 (ジェッツコミックス)

大奥 10 (ジェッツコミックス)

赤面疱瘡が研究と実験によって駆逐されていくさま。
ワクチンが民間にひろがっていく可能性が示されたこと。
いままでメインキャラクター一人だったコミックスの表紙が、ワクチン開発に協力した人達複数*1であること。

理知の力とそこが切り開く自由と平等。そんな巻でした。

10巻で一番好きなのは伊兵衛と喜助*2の会話です。

それってよ 大変な事だと思わねえか?喜助
人が病に勝ったんだ  神でも仏でもなく人の力で…!!


伊兵衛にそう言われた喜助は、はっとした顔をします。指摘されてコトの意義を、真の価値を理解したことでそれが新たな希望、次への原動力となる。青沼を中心に行われたワクチン開発が理系的な理知だとしたら、ここで伊兵衛が披露したのは、分析の力であり、言葉の力であり、評論家的な仕事であり、いわば文系的な理知です。


すべてひっくるめて、10巻はあまりにも啓蒙主義的です。
前時代的に感じるくらい。でも、建前を脊髄反射的な感情で攻撃しても何もいいことはないく、やはり社会は建前でくるまれていないといけない。だから私は理知が勝ちすぎる傾向にあるよしながさんの物語を、この巻を素晴らしいと思う。

*1:それも年齢、性別、地位がばらばらの人達である事が服装などから一目瞭然

*2:ほんとうはにんべんによろこぶ