フランケンシュタインの勉強

西洋の怪物も勉強してみようキャンペーンで吸血鬼とフランケンシュタインと狼男をピックアップして、吸血鬼の基本が分かったところでフランケンシュタインに移行、そして早々に気づきました。これはあまり面白くないと。
理由は簡単で、フランケンシュタインはメアリー・シェリーという作者が1818年の発表した小説のキャラクター、純然たるフィクションの産物なのです。背景となる土着の化け物とか伝承の類がないと面白くないんだよなー、私にとって。
いちおう約200年前なんですが、「ジキル博士とハイド氏」とあわせて「近代都市・都会人の成立にともなう闇」という感じで、現代に通じる問題を扱った最古の部類、という扱い。心理分析的なものの考え方が好きじゃないという事にも気がつかせてくれました。

ただ逆にいうと、現代に通じる諸問題が初期型ゆえのストレートさで提示され、基本的な解釈が各種一通りなされているので、批評や分析の基礎勉強にはうってつけのサンプルだとは思いました。メディアミックスの過程で改編され変質していく過程なんかも現代的だと思うし。


「生命想像という禁忌」「被造物による反乱」というのがこの作品のテーマの肝のようですが、このテーマははキリスト教徒だから切実に怖い、ようにおもいました。「神の似姿たる人間(それを裏打ちする神の唯一性)」という所が尊厳やアイデンティティーに切実に関わっており、ゆえに神以外が生命を創造出来てしまう事が怖いのではないかしら。
「アイ、ロボット」みたいな大量のロボットが整列してる絵面、ハウッドで定期的にあるけど切実に怖いと思った事がなくて*1
機械が人格めいたものをもって自立して動き出しても「ああそういう事もあるかもね」くらいですよ。だって日本は擬人化の国だもの。あちこちそっちどっちに変な生き物がいて当たり前の国なんだもの。器物の妖怪なんか大昔からいる国なんだもの。
アニメや特撮の「ロボットが相棒」な作品って、もしかして欧米人からすると全然違う風に受け止められていたり、するのかしら。

フランケンシュタイン(博士)の苦悩を、生殖行為(出産や中絶)についての苦悩と読み解いてるものがあって、それは目から鱗で面白かったです。もうすぐ200周年で、そのときに新しい映画とか何か動きがあるような気がしますが、その場合はモロに現代の寓話として生殖医療寄りのお話になる可能性も高い、かなあ。

読んだのはこのへん。

現代思想で読むフランケンシュタイン (講談社選書メチエ)

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フランケンシュタイン・コンプレックス―人間は、いつ怪物になるのか

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批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

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イギリス小説のモンスターたち―怪物・女・エイリアン

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ホラー小説大全 ドラキュラからキングまで (角川選書)

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*1:勿論、これはテーマ的には「科学技術の暴走」の寓意であり、その意味での恐ろしさは(特に今は)身にしてみる訳ですけど…。