聖書男

聖書男(バイブルマン)  現代NYで 「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記

聖書男(バイブルマン) 現代NYで 「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記


聖書に書いてある事を可能な限り実行してみるとどうなるか…という体験記。旧約聖書がメインで(著者がユダヤ人だから)、新約のほうは少し物足りないかなー。具体的で理不尽な話がより多い旧約のほうが体当たりしがいがあるのは確かなんだけど。
体験の果てに分かる事――「原理主義と呼ばれる人だって都合よく聖書の文言を取捨選択して実行しているに過ぎない」――というのはおそらく予想出来る範囲内なのですが、それはやはり実際に一年間頑張った人ではないと言えない事ではある。特に、原理主義を自認する人に対して疑義をぶつけたい時などに効力を発するように思います。

著者の心持ちの変遷を見ていると、「規律を遵守することによって生じる何か(満足感や優越感、他人との差異の確認など)」というのが宗教や道徳の正体(の一部)であるように思えました(そしてそれは多分宗教や道徳に限らなくて、集団(共同体)の管理・統治に大きく関わっている)。個人の内面に踏み込むような規律を極力排除するのが近代国家の礼儀で、そのフェアさには当然無上の価値があるんだけども、それだけではすくいあげられない「何か」が存在するもの確かだなあ、とか。